夏合宿のジンクス

 ■ 第4話

「ごく単純な話なんだよ。」

今思えば、本当にその通り

単純な話だった



主人公は少年、わんぱくでいたずら好き

いたずら仲間のリーダー的存在

大人達をからかったり

ボロアパートを改造して自分たちの秘密基地にしたり


街外れに一人の老人が住んでいた

大人達から『へんくつ』と呼ばれ

近づくことを禁じられていた

自分の住んでいる敷地を高い壁で囲ってる

噂ではその中で何か怪しげなことをやっているらしい

その日のいたずらのターゲットは決まった


一日、へんくつをつけまして見ることにした

彼はゴミ捨て場をいくつも回る

いろいろな物を拾っていくが

一番多いのはガラス瓶

誰かが言う

あいつはガラス瓶で何かをつくっているのだと

ならばそいつを壊してやろう

次の日のいたずらは決まった

そして彼らはパチンコなんかを持ってへんくつの所にのりこむ…。


「…そして、見るんだ。」

「何を?」

彼女は俺の話に聞き入ってる様子だった。

「ガラス瓶さ」

俺はわざとじらした。

「そんなのは分かりますよ」

「へんくつがつくっていた物を見るんだ」

「だから、そんなのは分かりますってへんくつさんはガラス瓶で何をつくってたんですか?」

ほほを脹らまして、彼女は聞いてくる。

「ははは、へんくつさんか」

思わず笑ってしまった。



「彼らは虹を見るんだ。」

「虹って空にかかる虹ですか?」

「そう。」

「へんくつさ…、へんくつはガラス瓶で虹をつくってたんですか?」

「違うんだけどね、へんくつはガラス瓶をつんで何かを作っていた」

「何かって?」

「それはおいおい。それが光を乱反射して、いろんな色を見せてたのさ」

「なるほど、だから虹か。それは綺麗そう…。」

その様子を想像しながら彼女は言う

「んで、彼らはそれに見とれてるうちに、へんくつがやってきて逃げ出すんだ。」

タバコを吸いこみ、一服いれる



「おもしろい、こんな話?」

耐えきれずに俺は質問をする

「ええ、とっても。話自体が面白いのあるけど、先輩の話し方がとってもいい感じで。」

「はぁ?なんで?」

少しおどろいて、俺は聞き返す

「なんか、話に引き込まれていくんですよ。」

「なんじゃそりゃ、よくわかんねー」

「うふふ、ならいいんですよ。早く続きを」

そういって、先を急かす彼女を無視して

俺は短くなったタバコを灰皿に落とし

次を口にくわえる



このままだと彼女にペースを取られる気がして



精神安定剤の残りはあと7本
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