夏合宿のジンクス

 ■ 第5話

「まぁ少年たちは、何かを壊すつもりで敷地に入った…」
フェンスによっかかり、真上を見ながら

タバコをもって、星空を見ながら

「壊そうとしてた何かは虹のだった。」

記憶をたどり

自分に語るように話を続けた



へんくつの作ってた何かを少しだけ壊して

彼らは逃げ出した

しかし彼は壊した何かを綺麗だと思った

そして、それが何なのか知りたいと思った

彼らは子供だ

より魅力的なものに引かれる

少なくとも綺麗なものなら

壊すより作る方が魅力的だと感じるぐらい

彼らはまだ純真だった


へんくつは何を作ってるのか知るため

それに参加するため

壊したお詫びのため

彼らはガラス瓶を集めることにした

学校の授業の一間といえば

親は喜んで協力した

そして相当の量のガラス瓶を持って

彼らはまたへんくつの所にやってきた



「それでたくさんの瓶を持ってまたへんくつの所に行くんだ。」

言ってタバコの灰をボトルの中に落とす

そのボトルを見ると、青いガラス瓶だった

「こんな感じの瓶をたくさん色も文字どうり色々。」

『灰皿』を手にとって左右に振って見せた

「へんくつはそれを積み上げて何かを作ってたんですよね?」

「ああ。」

「奇麗なんだろうな…。」

それを想像しているのだろう

乏しい明かりの中で彼女の瞳は本当に輝いてる様に見えた

思わずドキッとするぐらいに…

2つも年下でまだ子供だと思っていた彼女が

少しづつ自分の中で女として感じ始めている自分を見つけた

おそらく彼女は去年の俺のようにジンクスの体験者になろうとしてる…。


この部活には合宿にまつわるジンクスがある

後輩が先輩に告白して必ずフラレる。 毎年 。


去年の俺はそれを終わらせるつもりだった。

今年の彼女はどうなのだろう…

今年の俺は…


「先輩?」

目の前の後輩に呼ばれて我に返る

「あ?あぁ…。」

「どうしたんですか?むずかしい顔して?」

自分が何かしたろうか?と言う顔をしている

「いや、正直俺には想像つかないんだ」

「ガラスがですか?」

「あぁ、どんなに奇麗なのか。どんな風に回っているのか…。」

それはごまかしだったが、嘘ではなかった

挿絵もあえてその部分は書いていなかったのだろう

俺にはすごく奇麗な光と言うものが想像できない

「回っているのか?」

「あっ…、言っちゃったな。」

「それで何を作ってたんですか?」

「ちゃんと順番に話すよ」

取り出したタバコに火をつけながら…



星空の下に一本のガラス瓶と二人と6本のタバコ
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